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2011年10月20日木曜日

オブジェマガジン「遊」

この本を1978年のとある午後に本屋で見かけた衝撃は
今でも心に焼き付いて忘れられません。
とにかくただならぬオーラが漂っていました。

内容はあまりに難しくてチンプンカンプンでしたが、
なぜか心がときめいたことは今でもよく覚えています。




表紙のデザインは、杉浦康平氏というグラフィックデザイナーのものです。
素晴らしいデザイン力です。

ある著名なデザイナーの方が、「もし杉浦康平をグラフィックデザイナーと呼ぶのなら、世界中のデザイナーはデザインをしていない」と言わしめた人物です。

最近はCGでマウスを駆使しながらデザインをするのが当たり前ですがその当時手書きでこのデザインをされた能力には、本当に舌を巻きます。

その上、なんと「遊」のデザインを10年間携わりながら
松岡さんの前衛雑誌を作りたいという心意気に感動し、デザイン料を一切受け取らなかったという事実!

それをつい最近知ってからというもの、今でも私は感動に内震えています。
是非こちらをお読み頂きたい!

こんなに感動したのはホント久しぶりです。


「遊」には、不定期刊のI期と隔月のII期、そして月刊のIII期がありました。
私はII期とIII期のバックナンバーは全てそろえてありますが、I期に関しましては4冊程度です。

実はI期とII期の過渡期に、特別企画として「存在と精神の系譜」が発売されました。
これは松岡さんが非常に影響を受けた100名の著名人に対する個人的な見解を綴った企画でしたが、この本のサブタイトルが

「私」と「世界」を超えようとした者達の景観

というものでした。

このサブタイトルはおそらく松岡さんでしか表現し得ないだろう素晴らしい感性を私は感じます。

この本は前々回のブログの「空海の海」以上にボロボロのため、写真ではお見せできませんが、かれこれ20年近く暇さえあれば何度も繰り返して読んでいます。

フランスの哲学者シモーヌ・ヴェイユに関しての松岡さんの最後のコメントがこういう文章で終わっています。

「男は女を感動させて泣かせるべきだ。」という見解があるようだが、そんな無定見な反論ではただただ男を動物化させるだけである。「いいえ、男の身体に泣くのではなく、その精神だ。」という前に、女達よ、地球を抱いて男こそを泣かせなさい。

もう何度読んでもシビレます。
私は「IQ84」は2ページも読み進めることができませんでしたが、松岡さんの本なら何百回も読めます。どうして私の心の琴線を触れまくるのか。長い間それが謎でした。

そして、1年ほど前から読み進めている松岡さんの「先夜千冊」を読み進めていくにつれ、松岡さんの文章がどうして私に感動を与えるのかという謎が、徐々に分かってきたのです。

松岡さんは単なるインテリゲンチャーではありませんでした。

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